基本情報技術者試験(FE)は、独立行政法人IPAが実施する国家試験で、ITエンジニアの登竜門と位置づけられています。現在はCBT方式で通年実施され、科目A(90分・60問)と科目B(100分・20問)を連続で受験します。合格基準は各科目とも評価点600/1000以上で、直近の合格率は概ね40%前後で推移しています。受験料は7,500円(税込)。本記事では最新の制度・統計に基づき、受験のメリットや学習戦略、申込み方法までを網羅的に解説します。
Table of Contents
基本情報技術者試験(国家資格)とは
どんな目的向けか | 就職転職年収アップ未経験からのキャリアチェンジ |
どんな職種向けか | システムエンジニアプログラマーITコンサルタントインフラエンジニアネットワークエンジニア |
おすすめポイント | 基本情報技術者試験は、ITエンジニアの登竜門とされる国家資格で、情報処理技術やプログラミング、ネットワーク、データベースなど幅広い知識を体系的に学べます。未経験からIT業界を目指す人にとって基礎力を証明できる資格であり、履歴書に記載することで採用担当者へのアピールにつながります。 |
未経験者が取得にかかる学習時間 | 未経験者:約300〜500時間(IT基礎:150〜200時間、プログラミング・アルゴリズム:100〜150時間、過去問演習:50〜150時間) IT実務経験者:約100〜200時間(知識整理:50〜100時間、過去問演習:50〜100時間) |
総費用(教材+講習+試験料+更新料) | 教材費:1,000〜5,000円(参考書・問題集) 講習費:0円〜50,000円(独学の場合は不要、通信講座やスクール利用時は追加) 試験料:7,500円(2025年現在) 更新料:不要 |
取得方法 | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する試験を受験し、合格することで取得できます。試験は午前・午後の2部構成で、マークシートと記述式問題があります。 |
合格率 | 25%前後(年度により変動) |
試験実施場所 | 日本全国の都道府県に設置された試験会場(都市部では複数会場)。例:東京都、大阪府、愛知県、福岡県、北海道など。CBT方式のため、全国各地のテストセンターで受験可能。 |
どんな企業向けか | NTTデータ, 富士通, NEC, ソフトバンク, 楽天, リクルート, 日立製作所, パナソニック, KDDI, 日本IBM |
詳細情報 | 詳細はこちらをクリック |
基本情報技術者試験(FE: Fundamental Information Technology Engineer Examination)は、ITを活用したサービスやシステムの企画・設計・開発・運用に必要な基礎的知識と実践的活用能力を評価する国家試験です。スキルレベルではレベル2に相当し、ITエンジニアとしての基礎固めに最適です。
スキルレベルとは、IPA(情報処理推進機構)が定める情報処理技術者試験における能力段階の指標です。IT人材育成やジョブ設計の共通物差しとして用いられ、レベル1〜4の4段階で構成されています。
基本情報技術者試験(FE)はレベル2に位置づけられ、ITの基礎知識と実践的スキルを備え、定型的な開発・運用業務を自立して遂行できることが目安です。
スキルレベル体系(基準の概要)
レベル | 到達目安(できること) | 代表的な試験区分 |
---|---|---|
Lv.1 | ITの基礎用語・原理を理解し、指示のもとで簡単な作業を実施できます。 | ITパスポート試験(IP) |
Lv.2 | 設計・開発・運用の基礎を理解し、定型的な業務や小規模タスクを自立して遂行できます。 | 基本情報技術者試験(FE) |
Lv.3 | 応用的な知識・スキルを用いて、要件定義〜運用における実務の中心を担えます。 | 応用情報技術者試験(AP) |
Lv.4 | 高度専門領域やマネジメントをリードし、複雑な課題の解決や戦略立案ができます。 | 高度区分(NW/DB/PM/SA/SC/SM/AU など) |
補足:スキルレベルの「基準」としての位置づけ
本レベル体系は、IPAが運営する情報処理技術者試験制度内での公式な能力段階です。企業の職務定義・評価や人材育成体系の設計時に、キャリアの目安として広く参照されています。
基本情報技術者試験(国家資格)試験の概要
試験方式
- CBT方式(通年・随時):全国のテストセンターで実施。科目A→(最大10分休憩)→科目Bを連続受験します。
- 再受験ポリシー:同一区分の再申込は受験日の翌日から起算して30日超以降。
- 特別措置試験:身体等の事情でCBT受験が難しい方向けに、年2回(4月・10月)筆記実施あり。
出題範囲
試験要綱・シラバスに基づき、ストラテジ(経営)・マネジメント(IT管理)・テクノロジ(IT技術)の広範な領域から出題。近年の要綱改訂では、法制度やトレンドの変化(例:2025年4月の要綱Ver.5.4での法令項目更新等)が反映されています。科目Bはアルゴリズム/データ構造や擬似言語、情報セキュリティ等の応用的読解・設計力が問われます。
基本情報技術者試験の出題範囲まとめ(最新シラバスVer.9.0対応)
基本情報技術者試験(FE)は、2024年10月以降の試験からシラバスVer.9.0が適用されています。科目Aと科目Bの出題範囲を整理しましたので、試験対策にお役立てください。公式シラバスのリンクも掲載しています。
▶ IPA公式シラバス(PDF):基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.0
科目Aの出題範囲
科目Aは「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3領域から幅広く出題されます。問題数は60問(うち6問は調整用)で、四肢択一式となっています。
- テクノロジ系:基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、開発技術など
- マネジメント系:プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査など
- ストラテジ系:システム戦略、経営戦略、技術戦略、企業活動、法務など
科目Bの出題範囲
科目Bは「アルゴリズムとプログラミング」「情報セキュリティ」に特化しており、より実践的な問題が出題されます。20問のうち19問が評価対象です。
- アルゴリズムとプログラミング(擬似言語、データ構造、アルゴリズム応用)
- 情報セキュリティ(マルウェア対策、通信セキュリティ、脆弱性管理、アクセス制御など)
科目Aと科目Bの比較表
科目 | 出題範囲の構成 | 主な特徴 |
---|---|---|
科目A | テクノロジ系 マネジメント系 ストラテジ系 |
幅広い知識を問う。60問の四択形式で「広く浅く」理解が必要。 |
科目B | アルゴリズムとプログラミング 情報セキュリティ |
擬似言語を中心に、思考力・実践力を評価。20問中19問が採点対象。 |
試験対策のポイント
- 科目Aは知識を「幅広く浅く」押さえることが重要です。
- 科目Bは擬似言語の演習やセキュリティ知識を重点的に対策しましょう。
- IPA公式シラバスを必ず確認し、最新の小分類までチェックすることが合格への近道です。
問題数・時間・合格基準点
- 科目A:90分・60問・四肢択一
- 科目B:100分・20問・多肢選択
- 合格基準:各科目 600/1000点以上(IRTに基づく評価点)。
難易度・合格率
最新の合格率データ
IPAの統計では、直近の月次合格率はおおむね40%前後で推移し、年度累計でも同水準です(参考:令和7年度資料)。受験者数は通年CBT化以降、安定的に推移しています。
基本情報技術者試験 合格率の推移(直近5年・年度合計)
出典:IPA「統計情報」。2021・2022年度は上期/下期の月次値から集計(加重平均)。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 注記 |
---|---|---|---|---|
令和6年度(2024) | 133,732人 | 54,501人 | 40.8% | IPA年次合計 |
令和5年度(2023) | 121,611人 | 57,278人 | 47.1% | IPA年次合計(通年CBT) |
令和4年度(2022) | 101,523人 | 37,995人 | 37.4% | 上期/下期の月次値を集計 |
令和3年度(2021) | 85,339人 | 34,689人 | 40.6% | 上期/下期の月次値を集計 |
令和2年度(2020) | 52,993人 | 25,499人 | 48.1% | 10月実施(CBT) |
注1)2021・2022年度は、当時の実施形態(上期/下期・複数月)による各月データを合算のうえ算出。
注2)2023年度以降は通年CBTのため、IPAが公表する年度合計値を採用。
注3)制度改定や集計方法の見直しにより、将来数値が更新される可能性があります。
出典:
・IPA「統計情報(基本情報技術者試験)」年次合計(2023・2024年度):
https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei_fe.html
・月次明細(2020〜2022年度の集計根拠):
https://studying.jp/kihonjoho/about-more/kiji-2.html
初学者でも合格可能な理由
- 通年CBTで計画→受験→振り返り→再受験(30日超)という学習サイクルが回しやすい。
- 試験の目的と範囲が明確で、シラバス準拠の教材・講座・アプリが豊富。
- 合格基準は各科目6割と到達目標が具体的で、逆算学習がしやすい。
他資格との比較
試験 | スキルレベル | 実施方式/時期 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
ITパスポート(iパス) | レベル1 | CBT・随時 | ITの共通基礎。分野別評価あり(ストラテジ/マネジメント/テクノロジ)。 |
基本情報技術者(FE) | レベル2 | CBT・随時 | ITエンジニアの登竜門。科目A/Bを連続受験。 |
応用情報技術者(AP) | レベル3 | 現行:春・秋。 2026年度からCBT移行予定(形式・時間は同様)。 |
より応用的・実務寄り。 |
受験するメリット
基本情報技術者試験(FE)は、IPAが実施する国家資格であり、就職やキャリア形成に直結するメリットが多い試験です。ここでは受験によって得られる主な利点を、信頼性ある情報源や実務での活用事例とあわせて整理します。
- 就職・転職:
国家資格としての客観的評価指標であり、IT企業だけでなく金融・製造・教育機関など幅広い分野で応募要件や加点要素として活用されています。IPA公表の活用事例でも、多くの大学や企業が入試・採用評価に利用していることが示されています。
- スキルアップ:
シラバス準拠の出題範囲により、情報セキュリティ・ネットワーク・データベースなどの体系的知識を習得可能です。単なる暗記ではなく、アルゴリズムや擬似言語を通じて実務に直結する基礎力を養えます。
- 年収アップ・社内評価:
多くの企業で昇格条件や資格手当の対象となっており、取得者に対する月額数千円〜1万円前後の資格手当制度が存在します。IPAの「試験のメリット」にも示されている通り、社員教育・人事評価に積極的に活用されています。
- 未経験からのキャリアチェンジ:
試験範囲が明確で到達目標が数値化されているため、文系出身や非IT職からITエンジニアを目指す人にとって学習計画が立てやすいのが特徴です。実際に、資格スクールや通信講座では「未経験者から合格→エンジニア転職成功」の事例が多く紹介されています。
- 副業・フリーランス:
クラウドソーシングやSES案件において、FE合格は「基礎スキルの証明」として発注側に安心感を与えます。未経験でも「国家資格保持者」としてプロフィールに記載でき、案件受注や報酬交渉の際に信頼性向上につながります。
勉強方法・対策
勉強時間の目安
- IT経験者:50〜150時間程度
- IT未経験:150〜200時間(〜300時間)程度を目安に計画
推奨プラン:基礎インプット(用語・計算・セキュリティ)→科目A演習の反復→科目Bのアルゴリズム/擬似言語と読解訓練→模試で時間配分最適化。
独学と講座の選び方
基本情報技術者試験における「独学」と「講座」の選び方
基本情報技術者試験(FE)に挑戦する際、多くの方が「独学で学ぶか」「講座を受講するか」で悩まれます。それぞれにメリット・デメリットがあり、自分の学習スタイルや状況に応じて選択することが重要です。ここでは独学と講座の違いを詳細に整理しました。
独学の特徴
独学はコストを抑えつつ、自分のペースで学習できるのが大きな魅力です。ただし、情報収集力や自己管理能力が求められるため、基礎学力や学習習慣がある方に向いています。
- メリット
- 費用が安い(参考書・過去問集で数千円~)
- 自分のペースで進められる
- 必要に応じて重点分野に集中できる
- デメリット
- 最新情報や出題傾向を自分で調べる必要がある
- モチベーション管理が難しい
- 理解できない部分があると挫折しやすい
講座受講の特徴
講座はカリキュラムが体系的に構成されており、効率的に学べる点が強みです。特に初学者や学習時間を限られた期間で確保したい方に向いています。ただし、受講料は独学に比べて高額になりがちです。
- メリット
- 最新の出題傾向に対応した教材・カリキュラム
- 講師やチューターによる質問対応・解説がある
- 学習スケジュール管理がしやすい
- デメリット
- 受講料が高い(数万円~)
- スケジュールに縛られることがある
- 自分のペースで柔軟に調整しにくい場合もある
独学と講座の比較表
学習スタイル | メリット | デメリット | 向いている人 |
---|---|---|---|
独学 | 費用が安い 自分のペースで進められる 重点的に学べる |
情報収集が必要 モチベ維持が難しい 理解が止まると挫折しやすい |
自己管理が得意 コストを抑えたい 勉強経験がある程度ある |
講座 | 体系的に学べる 質問・解説が受けられる 最新情報に対応 |
費用が高い スケジュールの制約 自分流の調整が難しい場合あり |
初学者 短期合格を目指す 効率的に学びたい |
学習方法の選び方
- 基礎知識があり、自己管理が得意な方 → 独学がおすすめ
- 初めて情報処理技術者試験に挑戦する方 → 講座で体系的に学ぶと安心
- 費用対効果を重視する場合は独学、時間効率を重視する場合は講座を選択するのが基本です。
どちらを選んでも、過去問演習とシラバス準拠の学習が合格への最短ルートです。自分に合った学習スタイルを見極めて、計画的に進めていきましょう。
アプリや問題集の活用法
- CBT向けUIのアプリで短時間×高頻度のアウトプット習慣化(例:科目A/B対応アプリ)。
- Web演習(過去問道場など)で分野別演習・間違いノート機能を活用。
- 科目Bは時間配分(1問≒5分目安)を意識し、読解→方針決定→計算・トレースの順で精度と速度を両立。
おすすめ参考書・教材
初学者向けテキスト
- 独学向け:【令和7年度】 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集 (絶対合格の教科書シリーズ)シラバス準拠のテキスト+過去/公開問題の反復。
- 基礎を身につけた後の独学向け:【Amazon.co.jp限定】令和07年 基本情報技術者 パーフェクトラーニング過去問題集(本書未収録コンテンツ データ配信)特典PDF『科目B アルゴリズム問題 はじめの一歩(選択処理、繰返し処理、配列編)』を提供しています。「科目Bのポイント集」で基礎はわかった!でも、いきなり過去問題に取り組むのは不安、難しい……。という方
過去問対策アプリ・問題集
- スマホアプリ:基本情報技術者(科目A・科目B)全問解説 等で分野別ドリル&模試。
- Web演習:過去問道場 の分野別・ランダム出題機能で弱点克服。
通信講座・オンライン講座
- 短期合格向けのオンライン講座(例:STUDYingなど)。動画講義+問題演習+学習管理で効率化。
- 科目A免除制度対応講座の活用(修了認定で科目A免除)。
試験申し込み方法・日程
受験申し込み手順
- CBTS受験者サイトでアカウント登録・本人情報入力。
- 試験選択(FE 科目A・科目B または 科目A免除)。
- 会場・日時選択(当月〜3か月先の月末まで)。
- 受験料の支払い(クレカ/コンビニ・Pay-easy/バウチャー)。
- 当日:本人確認書類持参。試験終了後に画面で科目別評価点を確認可能。
試験会場と日程
- 会場:全国のCBTテストセンター(試験開始は会場により最大9:00〜21:00枠)。
- 日程:通年・随時。申込後の日時変更は試験日の3日前まで。
受験料
7,500円(税込)。支払方法により別途手数料がかかる場合があります。
合格後の活用方法
就職活動での活用
国家試験としての客観的指標で、IT職種のポテンシャル証明や非IT職でのITリテラシー証明に有効。大学・学校・企業での活用事例も公表されています。
社内評価・資格手当
企業の人事制度で評価・奨励対象に含める事例が多く、研修・昇格基準・資格手当などに活用。詳細は各社規程によるため、社内規程の確認が必要です。
次のステップ(上位資格)
合格後は応用情報技術者(レベル3)や、専門分野の高度試験(レベル4)への挑戦が王道です。APは2026年度からCBT移行予定です。
よくある質問(FAQ)
- Q. 科目Aと科目Bを別日にできますか?
A. できません。連続して実施されます(間に最大10分休憩)。 - Q. 合格の判定方法は?
A. 科目A・Bそれぞれ600/1000点以上で合格。IRT方式により評価点が算出されます。 - Q. 申込後の日時変更は?
A. 試験日の3日前まで変更可能です。 - Q. 再受験の間隔は?
A. 同一区分は前回受験日の翌日から起算して30日超以降に再申込が可能です。 - Q. 合格率はどのくらい?
A. 直近は概ね40%前後で推移しています(月次・年度累計の詳細はIPA統計を参照)。
まとめ
基本情報技術者試験は、ITエンジニアを目指す方にとって最適な第一歩です。通年CBTで受験計画を柔軟に組みやすく、到達目標(各科目6割)も明確。最新シラバスに沿った教材・アプリ・講座を活用し、基礎→演習→時間配分訓練の流れを徹底すれば、初学者でも十分に合格が狙えます。就職・転職・社内評価のいずれにも活きる国家資格として、早期の学習開始と受験計画の具体化をおすすめします。
参考・出典(一次情報優先)
- IPA|基本情報技術者試験(公式)
- IPA|受験申込み(CBT方式)
- CBT-Solutions|【CBT】基本情報技術者試験(FE)
- IPA|受験料の納付方法(7,500円)
- IPA|試験要綱・シラバス(改訂情報含む)
- IPA|統計情報(基本情報技術者試験)(月次合格率 等)
- 資格Pass Navi|合格基準(科目別600点)解説
- STUDYing|合格に必要な勉強時間の目安
- TAC|勉強時間の目安
- BizLearn|勉強時間の目安
- 過去問道場|使い方
- アプリ|基本情報技術者(科目A・B)全問解説
- IPA|試験区分一覧(スキルレベル)
- STUDYing|基本情報技術者講座
- IPA|試験のメリット
- IPA|活用事例(企業・学校・官公庁)
- IPA|試験の概要(制度の目的)
- IPA資料|採点方式・合格基準(IRT/基準点)
- 科目B対策(時間配分の考え方)
- ITパスポート(参考:分野・評価)
- IPA|応用情報技術者(CBT移行予定)