【サーバーNo.71】DDoS(分散型サービス拒否)とは?IT用語をサクッと解説

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本記事は、DDoS(分散型サービス拒否)を初めて学ぶ方に向けて、仕組みや背景、対策の考え方をやさしく整理したものです。専門用語はできるだけ噛み砕き、ボットネット増幅攻撃など重要語句は丁寧に説明します。短時間で全体像をつかめるように、図解と具体例を交えながら解説します。

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DDoS(分散型サービス拒否)とは?

DDoS(Distributed Denial of Service)とは、多数の機器から同時に大量の通信を送りつけ、サービスを使えない状態に追い込む攻撃のことです。単一の端末から行うDoSと違い、多数の端末を遠隔操作するボットネット(感染機器の群れ)が使われるため規模が大きく、ネット回線・サーバー資源・アプリケーション処理のいずれか(または複数)を枯渇させます。攻撃はレイヤー3/4のプロトコル攻撃レイヤー7(アプリ層)攻撃、そしてリフレクション/増幅攻撃などに分類されます。

わかりやすい具体的な例

人気のラーメン店に、誰かが予約サイト経由で大量の偽予約を一気に入れると、本当に来店したいお客さまが予約できず困ります。これがネットでは、攻撃者が多数の機器を使ってサイトに同時に大量アクセスするイメージです。店(=サーバー)は受付処理で手一杯になり、正規のお客さま(=通常ユーザー)が入れなくなります。つまり混雑を人工的に作って入口をふさぐのがDDoSです。

flowchart LR A[攻撃者] --> B[指令サーバ] B --> C[感染機器群] C --> D[標的サーバ] D --> E[サービス遅延/停止]

上の図では、攻撃者が指令サーバを介して多くの機器に命令を出し、まとめて標的へ通信を送ります。結果としてサーバは処理が追いつかず、ページが開きにくくなったり止まったりします。つまり入口の処理が詰まることで、正規の人が通れなくなるのです。

商業施設の駐車場で、悪意のある人たちが一斉に空きスペースを占拠すると、本来の買い物客が停められません。ネットでも同じく、攻撃者は多数の機器で無意味なリクエストを送り、処理枠を奪います。駐車スペース(=サーバー資源)が埋まるため、普通の来訪者(=正規ユーザー)が使えなくなります。

flowchart LR A[多数の機器] --> B[過剰リクエスト] B --> C[標的サイト] C --> D[正規利用の妨害]

図のとおり、たくさんの機器から同時に要求が来ると、サイトの処理枠が埋まり、本当に必要な処理が後回しになります。結果的に読み込みが遅くなったりエラーになったりして、利用できない状態が生まれます。

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DDoS(分散型サービス拒否)はどのように考案されたのか

単独の発明というより、インターネット普及とマルウェアの進化の中で段階的に形成されました。1990年代後半にボットネットという概念が広まり、1999年ごろから分散的にパケットを出すツールが観測されました。2000年初頭には大手サイトを狙う連続攻撃が起き、帯域消費型・プロトコル悪用・アプリ層といった手法が整理され、対策技術(CDN、WAF、スクラビング)が産業として発展しました。

flowchart TD T1[90年代: マルウェア拡大] --> T2[ボットネット登場] T2 --> T3[分散攻撃ツール普及] T3 --> T4[大規模攻撃事例] T4 --> T5[対策産業の発達]

考案した人の紹介

厳密にはDDoSに単独の考案者は存在しません。初期に注目を集めた人物として、2000年に米国の大手サイト群をダウンさせたカナダの若年ハッカーMichael “Mafiaboy” Calceが知られています。また、分散攻撃ツールの開発に関わったハンドルネームMixter(TFN/TFN2K関連)など、複数の開発者・攻撃者・研究者が歴史を形作りました。並行して大学や企業の研究者が解析・報告を行い、攻撃の可視化と防御手法が洗練されていきました。

考案された背景

常時接続回線の普及とPC・ルーターの脆弱性、そしてOSの標準設定の甘さが、感染機器の大量発生を招きました。さらにDNSやNTPなどインターネット基盤サービスの公開設定が攻撃の増幅源となり、広告・決済・ゲームなどオンライン経済の拡大が攻撃者の動機(身代金・妨害・示威)を強めました。こうした技術的・経済的要因が重なり、DDoSは大規模化・多様化しました。

DDoS(分散型サービス拒否)を学ぶ上でつまづくポイント

よくある疑問は「アクセス急増と攻撃の違い」です。自然な人気集中はリクエスト元やパターンが多様ですが、攻撃は同質で不自然な挙動が目立ちます。「DoSとDDoSの違い」は、前者が単一源、後者が多数源から来る点です。またボットネット(感染端末群)増幅(小さな要求で大きな応答を引き出す手口)WAF(Webアプリケーション防御)CDN(配信の分散)などの用語を合わせて理解すると判別と対策の筋道が見えます。

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DDoS(分散型サービス拒否)の構造

攻撃者はC2(コマンド&コントロール)から多数の端末へ命令し、帯域枯渇型(UDP flood等)プロトコル悪用(SYN flood等)アプリ層攻撃(大量検索・ログイン試行)を仕掛けます。さらにDNS/NTP/Memcachedなどを経由するリフレクション/増幅で威力を高めます。防御側はAnycast型CDNで負荷を地理分散し、スクラビングセンターで悪性トラフィックを洗浄し、WAF・レート制限・キャッシュでアプリ層を守ります。

flowchart LR A[攻撃者] --> B[C2] B --> C[ボットネット] C --> D{攻撃種類} D --> D1[帯域枯渇] D --> D2[プロトコル] D --> D3[アプリ層] D1 --> E[標的] D2 --> E D3 --> E E --> F[影響: 遅延/停止]

DDoS(分散型サービス拒否)を利用する場面

現実には「利用」ではなく不正に悪用される場面がほとんどで、身代金要求・業務妨害・示威行為などの目的で用いられます。

利用するケース1

ECサイトや金融系サービスに対する身代金型DDoS(RDDoS)です。攻撃者は「軽い攻撃」で実力を示し、続けて本攻撃の予告と暗号資産での支払い要求を送ります。被害側は在庫更新や決済の遅延で売上機会を失い、サポート窓口も混乱します。対策として、常時オンのDDoS保護レート制限キャッシュの積極活用代替決済・ミラーサイトの準備、そして法的・広報対応の手順を事前に整えることが重要です。

flowchart TD X[攻撃予告] --> Y[小規模攻撃デモ] Y --> Z[本攻撃] Z --> P[売上/信頼の損失] P --> Q[保護/緩和の発動]

利用するケース2

オンラインゲームやライブ配信、イベント販売サイトに対する妨害目的のDDoSです。大会や大型アップデートの直後などアクセスが増えるタイミングを狙い、遅延や切断を誘発して評判を下げます。防御側はゲーム用UDPのファイアウォール最適化Anycastでの吸収動的スケールアウトログ監視と自動ルールで継続運用性を高めます。利用者向けには接続リージョンの変更や再試行案内を用意し、体験劣化の最小化を図ります。

flowchart LR S[混雑期] --> T[攻撃開始] T --> U[遅延/切断] U --> V[評判低下] V --> W[防御と復旧]

さらに賢くなる豆知識

DDoSの威力を高める増幅攻撃は、DNS/NTP/Memcachedなどの公開設定を悪用します。測定指標にはbps(帯域)pps(パケット数)rps(リクエスト数)があり、攻撃タイプにより重視する指標が異なります。対策ではBGP Anycastでトラフィックを世界中に散らし、スクラビングセンターで悪性通信を除去します。アプリ層にはWAF・キャッシュ・チューニングが重要で、設計段階から冗長化と観測を組み込むと効果的です。

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あわせてこれも押さえよう!

DDoS(分散型サービス拒否)の理解を深めるために、サーバー周りで一緒に学ぶと効果的な5つのキーワードを挙げ、それぞれを簡潔に説明します。

  • オリジンサーバー
  • DNSサーバー
  • リバースプロキシ
  • CDNエッジサーバー
  • スクラビングセンター

オリジンサーバー:ユーザーの最終的なリクエストを処理する中枢です。DDoS時は直接叩かれないよう、手前でプロキシやWAFで守ります。

DNSサーバー:名前解決を担う基盤です。公開設定を誤ると増幅攻撃の踏み台になり得るため、再帰や応答サイズを適切に管理します。

リバースプロキシ:クライアントの前面に立ち、キャッシュやレート制限を適用します。オリジンの実IP秘匿にも役立ちます。

CDNエッジサーバー:世界中に分散配置され、Anycastで負荷を吸収します。静的コンテンツをキャッシュしてオリジン負荷を減らします。

スクラビングセンター:巨大な帯域と専用装置で悪性トラフィックを除去します。きれいになった通信だけをサイトに戻す仕組みです。

まとめ

DDoSの原理と対策の基本を理解すると、アクセス障害が起きた際の切り分けと初動が迅速になります。業務では、設計段階から冗長化・監視・緩和を組み込む判断ができ、被害と機会損失を大幅に減らせます。日常でも「混雑」と「攻撃」を見分け、信頼できるサービス運用の重要性を実感できるようになります。

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